東京高等裁判所 昭和41年(う)2246号 判決 1968年3月27日
主文
本件各控訴を棄却する。
当審における訴訟費用は、全部被告人吉羽忠の負担とする。
理由
<前略>
(二)次に所論(第二点)は、原判決は、憲法第九四条により各地方公共団体に認められた条例制定権に基づき制定される条例は、地域差を生ずることがあつても、憲法の容認するところであつて、法の下の平等の原則に反するものというを得ないから、集団示威運動を規制するため条例の形式をもつてした本件条例に地域差を生ずるものがあつても違憲でない旨判示したが、集団示威運動に対する規制は、全国画一的な立法形式によるべきものであつて、地域差を必要とする合理的な理由なくして条例の形式によつた本件条例は、集団示威運動を規制する条例を有しない地方公共団体のあることとも相まつて、法の下の平等の原則に反する違憲のものというべく、これを合憲と判断した原判決には、憲法第一四条の解釈を誤まつた違法がある、と主張する。
しかし、集団示威運動の規制については、いまだ全国的に統一した法律は制定されていないので、本件条例が憲法第九四条および地方自治法に基づき集団示威運動の規制につき規定したことは、それ自体なんら憲法第一四条に違反するものではないばかりでなく、本件条例が規定の体裁内容において他の地方公共団体の同種の条例と必ずしも同一のものではなく、またかかる条例を有しない地方公共団体もあつて、全国的には他の地域との間に集団示威運動の規制についての取扱いに差異を生ずる結果となつていることは認めなければならないにしても、憲法が地方自治の原則に基づき、各地方公共団体に条例制定権を付与している以上、各地域それぞれの特殊な事情に適合する必要から、地域により条例の内容に差別を生ずることのあるべきことはその当然予想するところであり、かかる差別は憲法みずからの容認するところというべきであるから、本件条例が前記地域差のため憲法第一四条に違反するものとはいうことができず(最高裁判所昭和二九年(あ)第二六七号、同三三年一〇月一五日大法廷判決、刑集一二巻一四号三三〇五頁参照)、所論は、到底採用することができない。論旨は理由がない。<以下略>
(石井文治 山田鷹之助 山崎茂)